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2010年5月25日 (火曜日)

Ijamp「条例探訪」より。その4

今回も、「条例探訪」の寄稿から転載します。とりあえず、「条例探訪」4連載で1回で進めているので、今回がまとめ(?)になります。

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前回の中で、書き込めなかったことを記したい。また今回は、地方議会と執行機関(地方議員と自治体職員)の関係についても、私が実感していることを言及したい。

◇これが分権下において小さな自治体の生き残る道?

今日、権限が移譲されることにより、最も苦しんでいるのは、規模の小さな地方自治体である。このことは、人口規模が大小の様々な地方自治体に私が足を運び、実感したことである。感覚的な話で申し訳ないが、私は「人口5万人以下の市」が、分権により苦労していると考えている。

分権が進むことにより、規模の小さな地方自治体は地方自治体が実施する仕事量(行政サービス量)が増加している。一方で、増加した仕事を担当する職員数は増えるどころか減少していく。すなわち、仕事量が増加しているのにもかかわらず、仕事を実施する自治体職員数が削減されているため、結果として一人の自治体職員が、今まで以上に多くの仕事を担当することになる。これは自治体職員にとっては大きな負荷となってしまう。

もちろん、このような自治体職員がすべてとは言わないが、少なからず、このような現状がある。そのようなことで悩んでいる地方自治体に対して、私の提案が一つある。分権によりにっちもさっちもいかなくなった人口数万人の市は、「町になる」ことを検討したらどうだろうか。

地方自治法には、人口5万人以上の「町村は市になることができる」と記されている。そして同法は「市は町村になってはいけない」とは明記していない。すなわち地方自治法を反対解釈で捉えると、市は町(や村)になることが可能と解される。そして市が町(や村)になることで、市がすべき権限を都道府県に返上することが可能となる。もちろんこの考えは極論であり、私は市が町や村になった事例を知らない。

◇地方議会と執行機関(地方議員と自治体職員)の関係

地方議会の役割の一つに執行機関の監視機能がある。確かに執行機関が住民の福祉の増進を忠実に実施するため、しっかりと監視することは大切である。しかし「監視」と「けんか」を同義語に捉えている場合が少なくない。当たり前だが、監視とけんかは違うものである。

昨今の地方議会と執行機関の中には、感情的によるものかは定かではないが、一見するとけんかしているような様子が垣間見られる。実は、地方議会と執行機関(地方議員と自治体職員)がけんかしている暇はない。現在、急激な速さで進みつつある都市間競争においては、双方がけんかしている時間はない。

ちなみに都市間競争とは、例えば、相模原市と横須賀市が競争することを意味する。その視点から捉えると、同じ地域の中で地方議会と執行機関(地方議員と自治体職員)がけんかしている暇はないのである。同じ地域の中で生活する地方議会と執行機関は運命共同体であり、双方が連携し協力していかなくては都市間競争の中で負けてしまうかもしれない。

地方議会であろうと執行機関であろうと、目指す目的は一緒である。それは何度も指摘するように、「住民の福祉の増進」である。繰り返すが、双方とも目指す目的地は変わらない。例えば、地方議会も執行機関も富士山の頂上を目指している状況といえる。唯一違うことは、頂上を目指すため「どこから登るか」が違うだけであり、最終的な目的地は変わらない。

地方議会は山梨県側の富士スバルラインから頂上を目指し、一方で執行機関は静岡県側の富士山スカイラインを通って頂を目指している。それだけの違いである(ちなみに、私はスバルライン派である)。もちろん、地方議会による執行機関の監視機能も重要である。しかしケースバイケースで取組み、住民の福祉の増進を目指して地方議会と執行機関(地方議員と自治体職員)がっちりと組んで行政運営をしていかないと、都市間競争には負けてしまう可能性がある。

◇ところで都市間競争は何を目指すのか

ところで、都市間競争というけれども、何を目指して競争するのであろうか。この点が不明確な地方自治体が少なくない。この点に関しても様々な回答があると思われる。その中で、私の考えを記しておきたい。経営学者のピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、企業の事業目的とは「顧客を創造することである」と端的に述べている(『現代の経営』(1954年))。

この言葉を地方自治体に当てはめると、「顧客」が「住民」に変わるのだと思っている。すなわち、都市間競争は「住民の創造」であり「住民の獲得」が目的なのである。この点について感心を持たれた読者は拙著『政策形成の戦略と展開~自治体シンクタンク序説』(東京法令出版)を手にとっていただきたい。

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コメント

現状の地方財政制度では、不交付団体以外は残念ながら市が町村になっても負担は減りません。

<普通交付税の額の算定方法>
各団体の普通交付税額=(基準財政需要額-基準財政収入額)=財源不足額
基準財政需要額=単位費用(法定)×測定単位(国調人口等)×補正係数(寒冷補正等)
基準財政収入額=標準的税収入見込額×基準税率(75%)

(総務省サイトより)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouhu.html

市が町村になって事務が減ったとしても、不交付団体でない限り、事務が減った分「基準財政需要額」も減ることにより地方交付税交付金が減るため、財政的な負担は変わらないのです。
そしてその財政的な負担には人件費も含まれるわけですから、職員の負担も楽にならないと思います。

投稿: N研究員 | 2010年5月25日 (火曜日) 23時24分

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