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2012年2月 5日 (日曜日)

自殺防止条例①

2011年の1年間に自殺した人は3万513人に上り、2010年よりやや減ったものの14年連続で3万人を超えている。依然として高水準であり、わが国のひずみが垣間見られる。今回は、自殺に対する取組みを条例という観点から探ってみた。

●自殺予防対策の現状

国には自殺対策基本法がある。同法は「近年、我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移していることにかんがみ、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与すること」(第1条)を目的としている。

同法第4条が地方公共団体の責務となっている。そこでは「地方公共団体は、基本理念にのっとり、自殺対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」とある。同法を根拠として、地方自治体において自殺予防対策が実施されている。特に、秋田県の自殺予防対策は有名である。同県は、自殺を「個人の問題」ではなく「地域社会が取り組むべき問題」と捉え、同時に県民の重要な健康課題として対策に取組んでいる。同県が自殺予防対策を実施してから、趨勢的には自殺者数は漸減傾向にある。

一方で、自殺予防や自殺防止を目的とした条例は、意外に少ない。2011年9月の時点で、平塚市(神奈川県)、日野市(東京都)、新発田市(新潟県)のみである。意外と少ないというのが実状である。

●自殺とは何か

何を持って自殺と言うのか。社会学者E.デユルケームの『自殺論』(1897)による自殺の定義は、「死者自身によってなされた積極的な、または消極的な行為から、直接または間接に生ずる死で、死者がこの結果の生ずべきことを知っている場合にこれを自殺という」としている。

わが国で使用される自殺者数統計は警察庁「自殺の概要資料」と厚生労働省「人口動態統計」の定義がある。一般的には警察庁発表の数字が注目される。その理由は、①警察庁発表の数字が厚生労働省発表よりも大きい、②警察庁発表は、年齢別の他、職業別や原因・動機別といった人口動態統計では得られない情報が存在しており、記事や話題として取り上げやすい、などによる。 

警察庁の自殺の定義は、「死後24時間以内に発見され、 遺書があること」となっている。また、遺体の発見された地域を管轄する警察署において計上され、在日外国人も対象となる。この定義に該当しない遺体は自殺者にカウントされず、変死扱いで処理されてしまう。

一方で厚生労働省の自殺の定義は、該当者が住民登録していた地方自治体において計上され、国内在住の日本人が対象である。また、死因不明の場合は「自殺」ではなく「その他外因」等に区分し計上される。なお、どちらの統計にしても、行旅死亡人は自殺者にカウントされない。

●平塚市民のこころと命を守る条例

全国ではじめて平塚市において「平塚市民のこころと命を守る条例」が制定された。議員提案政策条例である。平塚市条例は、「近年、平塚市においても自殺が社会問題となっている状況にかんがみ、自殺対策に関し、基本理念を定め、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り、もって市民が健康で生きがいを持って暮らすことができる社会の実現に寄与すること」(第1条)を目的としている。

平塚市条例は全16条から成立している。そして平塚市条例の性格は理念条例である。すなわち、ルールとしての条例であり、判断基準としての条例であり、意思を示した条例と指摘できる。平塚市条例は前半と後半と大きく2つにわけることができる。まず前半は総則である「自殺対策のスタンスの明示」である。そして後半は基本的施策である「具体的な政策の提示」である。

同条例の特徴は、国の自殺対策基本法よりも細かな自殺防止や遺族の支援などを打ち出している点にある。自殺対策基本法の基本理念は4柱から成立している。一方で平塚市条例の基本理念は5柱となっている。これは国の基本理念に加えて「自殺対策は、市民が共に支えあう地域福祉の増進という観点を踏まえ、地域の状況に応じたきめ細かな施策として実施されなければならない」という文言を追加したことにある。ここに平塚市の自殺の状況に応じたきめ細かな施策として実施する必要性が明記されている。そして2008年に平塚市条例が制定されたことを受けて、こころと命のサポート事業をはじめ様々な自殺対策の取組みを進めている。

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