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2012年2月 2日 (木曜日)

行政評価を考える③

学生を対象とした成績評価でも、行政活動を対象とした行政評価にしても、結局は当事者が「気づく」ことが一番重要と考えている。その意味では、当事者に「気づかせる」評価をしていかなくてはいけない。

当事者が気づくことにより、具体的な行動として結実してくる。繰り返すが、良い評価をつけるにしろ、悪い評価をつけるにしろ、その評価に当事者が気づいて、次の活動に反映させなくては意味がない。気づきを与える行政評価が求められる。

●行政評価の取組み状況

総務省が発表した「地方公共団体における行政評価の取組状況」(平成22年10月1日現在)を参考にすると、全国で54%(977団体)の地方自治体が政策評価、施策評価、事務事業評価のいずれかの行政評価を導入している。その内訳は、都道府県が98%、政令指定都市が95%、中核市は95%、特例市は100%、市区が78%、そして町村が30%となっている。規模の大きな地方自治体が行政評価を実施している傾向がある。

今日のわが国における行政評価の起源を探っていくと、1996年度から運用のはじまった三重県の「事務事業評価システム」にあると言われている。三重県の取組みを契機に、多くの地方自治体に行政評価が広がっていくことになる。

地方自治体における行政評価の導入については、次の3視点がある。第1に、職員の意識改革である。地方自治体の政策、施策、事務事業の目的体系図を明確にし、アウトカム・レベルの効果指標でそれらの効果を把握すること自体が職員の大きな意識改革をもたらすものとされる。例えば、静岡県の「業務棚卸表」のシステムが代表である。

第2に、地方自治体の行政活動の透明性を高め、住民に対する説明責任を果たすことである。今後の地方自治体は、説明責任である「話せる化」という能力が必要になってくるだろう。なお、「話せる化」に加え、「見える化」と「見せる化」という観点も重要な能力である。

そして第3に、事務事業の改善及び見直しに役立てることであり、北海道や宮城県の取組みが代表的な事例である(西尾勝編著(2000)『行政評価の潮流-参加型評価システムの可能性』行政管理研究センター)。

●最低評価をどう判断するか

私は様々な地方自治体で行政評価の委員を担当してきた。その経験から、行政評価の難しさを実感している。以下では問題提起として言及しておきたい。 

まず、行政評価の難しい点は、「評価結果が悪いE判定の場合は・・・」をどう考えるかである。すなわち、E判定「であるため、事務事業を廃止する」という見解と、E判定「だからこそ、事務事業を拡充しなくてはいけない」と2通りの結論が導出される。また、例え事務事業の「廃止」を選択したとしても、その廃止によって不利益や日常生活に被害を受ける住民等が少なからずでてくる。これをどう考えるか、ということも、行政評価を実施する私には悩ましい問題である。

●アウトプットとアウトカム

さらに、この「アウトプット」と「アウトカム」という視点が行政評価をややこしくさせる(と私は思っている)。アウトプットとアウトカムは、行政評価の一つの政策目標(期待される効果)である。この捉え方も実に難しい。アウトプットとは、政策の実施によって行われた行政対応の結果を指す。例えば、「①顧客訪問先件数を増やす」や「②保育所の増設」などである。一方でアウトカムとは、行政の対応によって地域社会にもたらされる影響を指す。例えば、顧客訪問先件数を増やした結果の「①売上の増加」や、保育所の増設による「②待機児童の減少」などである。

文化ホールの建設はアウトプットになる。文化ホールを建設することで、豊かな文化を楽しみ育む暮らしが地域の人たちに広がっていくことがアウトカムになる。また、観光の活性化のため、キャンペーンの回数などはアウトプットになる。そして、実施したキャンペーンを動機として、増加した観光客数はアウトカムになる。 

そして、このアウトプットとアウトカムは、価値観によって矛盾や対立することがある。例えば、高齢社会に向けて、寝たきり老人の収容施設を増やすということはアウトプットになる。しかし、それは寝たきり老人をつくらないというアウトカムを阻害することになってしまうかもしれない。また、障害者に対してみんなが手を貸しすぎる仕組みをアウトプットすると、逆に自立というアウトカムは難しくなる可能性がある。 

このように行政評価は、「なかなか難しい」というのが現状であり、誰もが納得する行政評価はできないのではないかと考えてしまう。

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