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2012年4月16日 (月曜日)

「高齢者」を対象とした条例の背景と傾向。

●「高齢者」を対象とした条例制定の背景

条例名に「高齢者」と明記しなければ、すべての住民が対象となる。その視点で考えると、条例名にわざわざ「高齢者」と明記しなくてもいいはずである(「高齢者」と明記しないことで高齢者が除外されることはない)。しかし、昨今は条例名に「高齢者」という3文字を入れる傾向が強まっている。

条例名に「高齢者」と明記することは、原則として高齢者以外の他の主体は条例の対象外となり、高齢者だけが条例の対象となることを意味する。そのように考えると、あえて条例名に「高齢者」と入れるからには、何かしらの理由があると推測される。その理由は、次の3点が考えられる。

第1に、高齢者だけに限定した問題が登場しているからである。例えば、交通事故が該当する。2008年における65歳以上の高齢者は10年前と比較すると約1.2倍に増加している(内閣府「平成20年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」)。事故の特徴は、交差点での出合い頭事故や右折時の事故、安全不確認、一時不停止の割合が高くなっている。また、警視庁の発表によると、2011年における東京都内の交通事故死者数は215人であり、このうち高齢者は88人(40.9%)となっている。これは年齢層別では高齢者が最も多くなっている。これは全国的な傾向である。

一方で高齢者への虐待も増加していることから、高齢者に特化した虐待防止の法整備(法律・条例)が進んできたと考えられる。厚生労働省の発表によると、2010年度に起きた高齢者への虐待件数は1万6764件で、2006年度の調査開始以来、4年連続で増加している(なお、同年度の児童相談所が対応した児童虐待相談は5万5152件で過去最多を更新している)。

第2に、高齢者「層」が厚くなってきため、政治的に高齢者を厚遇しなくてはいけなくなってきたことも考えられる。つまり、首長や議員が当選するためには、高齢者を対象とした政策を実施しなくてはいけなくなってきたと推察される。人口3区分でみると、1970年と2010年を比較では、高齢者人口は4倍に増加している。

さらに衆議院議員選挙における20歳代と60歳代の投票率の推移を観察する。いずれの年(回)も、60歳代が20歳代を上回っており、2009年では34.7ポイントの差が開いている。 今後も、高齢者「層」は増加していくことが予測されている。その意味では、首長や議員は、自らが当選するためには、ますます高齢者を対象とした政策を実施していくものと考えられる。

第3の理由として、高齢者に関する医療や社会保障費等の費用が拡大しており、それを抑制するために高齢者に対応することも考えられる。一例として、わが国における社会保障給付費に関する高齢者関係給付費を概観すると、年金保険給付費、高齢者医療給付費、老人福祉サービス給付費及び高年齢雇用継続給付費を合わせた高齢者関係給付費は、2009年度には68兆6,422億円となり、社会保障給付費に対する割合は68.7%となった。なお、前年度の2008年度は65兆3,597億円となっている。趨勢的に拡大している。

高齢社会の進展に伴い、高齢者に関する費用の拡大が予測される。しかしながら、国も地方自治体も財政難である。そこで、高齢者に関する費用の増加を抑制するため、政策を展開(条例を制定)しているものと考えられる。 

以上の3点が高齢者条例の制定の背景にあると考えられる。

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