以前、市民研究員を考えてみた。
自治体シンクタクが採用する市民研究員の意義は多々ある。例えば、竹村弘子・仙台都市総合研究機構主任研究員は職員研究員と市民研究員とが一緒に研究することにより、相互に啓発されるという長所をあげている。
特に「20代から60代まで幅広く、学生から有職者の方、一線を退かれた方の参加もあり、何れも土壌が異なるため、各々が気のつかないような視点からの発言を多く受ける。これにより、参加者の各々の見識がさらに広く深くなるとともに、調査研究に深みが出ると思われる」と言及している(竹村弘子(2001)「市民研究員制度について」財団法人日本都市センター『日本都市センター関係都市企画担当課長会議および都市シンクタンク等交流会議合同会議報告書(平成12年度)』財団法人日本都市センター)。
この市民研究員の意義を指摘すると、次の5点ほど考えられる。第1に、政策形成サイクルにおいて「参加」するのではなく、積極的に「参画」できる点である。第2に、政策形成サイクルの中で研究員(自治体職員)との協力関係のもと自治体政策を創り上げていくうえで、市民研究員が自治体政策に関わる課題を自らの問題として意識することである。 第3に、市民研究員が持つ、それぞれのネットワークに公共的な問題が伝播されることで、公共的な問題を意識する「人材」が増えることがある。第4に、研究員(自治体職員)だけでは行き詰まることも、市民感覚を持った「斬新」なアイデアが期待できる点である。そして第5に、政策形成サイクルの一連の過程を自治体職員と一緒に歩むことにより、研究員(自治体職員)と市民研究員(市民)の間で意識の「共有化」が図られる点である。この5点が市民研究員の長所と考えている。
特に重要なのは、政策形成サイクルの初期の段階(すなわち「政策研究」の段階)から市民が参画し、政策形成サイクルの全過程において関わることである。すなわち、パブリック・コメントのように政策決定の直前だけで関わるのではなく、政策研究の段階から密接に関わっていくメリットがある 。
このように政策形成サイクルの全過程で、市民研究員が一貫して関係していくことは、市民研究員の醍醐味であり、この動きは新しい公共を創出すると考えられる。 市民研究員の躍動は、市民の身近な生活に密着した自治体政策の創出が期待できるだろう。このように市民研究員という形で積極的に市民の意見を採用している自治体は市民から信頼を得て、他自治体からの住民を惹きつける一原因となることが予測される。これは、今後の都市間競争に勝っていくことにつながるだろう(牧瀬稔(2005)「『協働の失敗』を回避するために:協働の思想を求めて」社団法人地域問題研究所『地域問題研究No.69』社団法人地域問題研究所)。
しかしながら、注意しなくてはいけない点がある。それは市民研究員という特定個人の意見が自治体政策に大きく入り込む可能性があり、この点は公平性の観点から望ましくない。
| 固定リンク
コメント